みなさんは「最期をどこで迎えるか」を考えたことはありますか?
かつては自宅で最期を迎える人が8割を超えていましたが、現在では1割強まで落ち込み、代わりに8割強の人が医療機関で亡くなっています。厚生労働省の調査では、自宅で最期を迎えたい人が約55%もおり、医療機関で最期を迎えている現実と大きな差が生じています。
「終の棲家」である有料老人ホームには、「看取り」対応しているホームがあることをご存じでしょうか?
今回は「看取りケア」や、それに付随する言葉についてお話をします。
【 看取りケアとターミナルケアとは 】
「看取りケア(施設)」、「ターミナルケア(医療現場)」とは、余命が残り数週間から数カ月になった人に対する終末期の医療や看護、介護のことで、「看取りケア」は自宅や施設で看護、介護中心に行われ、ターミナルケアは医療現場で痛みを抑える緩和ケアを中心に行われます。
いずれも、最期を迎える人に対して、精神的・身体的な苦痛を軽減して一人ひとりが自分らしい最期を自然に迎えられる目的で行われます。
近年、医療技術の発達による、寝たきりで意識が戻らなくても行われる延命治療や、高齢者の意思を無視して行われる医療に対して、自分の意思を尊重した医療行為や最期を迎えたいと考えている人が多くなっています。
また、看取りケアやターミナルケアとよく似た言葉に「緩和ケア」があります。
「緩和ケア」は、看取りケア・ターミナルケアでも行われる医療行為なので、紛らわしく誤解している人もいます。緩和ケアは、がんなどの病気の痛みを取り除きながら、あくまでも病気を治療する行為の一環として病気治療と並行して行われます。
【 有料老人ホームでの看取りケア 】
介護付有料老人ホームでは看護職員と介護職員が、訪問診療医と連携します。また、住宅型有料老人ホームでは、訪問看護、訪問介護、訪問診療とで連携をしますが、いずれの場合でも、医師、看護職員、介護職員が連携して行っています。
介護保険制度では、老人ホーム内での看取りについて介護報酬上の加算を算定しています。看取り介護加算は、医師、看護職員、介護職員が連携して看取りをする場合に算定ができ、有料老人ホームでの看取りについて下記の条件を設け支援をしています。ただし、看取り介護加算の算定には、下記の条件をすべて満たしていなければいけません。
〈看取り介護加算の算定条件〉※夜間看護体制加算の算定が条件
(施設基準)
・看取り指針を定め、入居の際に、入居者等に対して内容を説明し、同意を得る。
・医師その他の職種の者による協議の上、看取りの実績等を踏まえ、看取り指針の見直しを実施。
・看取りに関する職員研修の実施。
(利用者基準)
・医師等が共同で作成した介護計画について説明を受け、その計画に同意している者
・看取り指針に基づき、介護記録等の活用による説明を受け、同意した上で介護を受けている者
※(参考)夜間看護体制加算の算定
・常勤の看護師を1名以上配置し、看護に係る責任者を定めていること。
・看護職員等により、利用者に対して24時間連絡できる体制を確保し、かつ、必要に応じて健康上の管理等を行 う体制を確保していること。
・重度化した場合における対応に係る指針を定め、入居の際に、利用者等に対して当該指針の内容を説明し、同意を得ていること。
では、看取りの有無を重視して有料老人ホームを選ぶ際には、どのような点に注意したらよいでしょうか?
それは、医療行為の必要性によります。
医療行為が頻繁に必要な場合は、「看護師が24時間常駐、又は訪問看護24時間体制であるか?」
医療行為が不必要な場合は、「看護師が日勤帯で常駐、又は訪問看護体制であるか?」を基準として検討し、また、看取り介護加算を行っているかどうかも判断材料の一つとなります。
有料老人ホームでの看取りにおいては、施設内で行える医療処置や、職員の看取りに関する経験や知識が不足しているといった課題、夜間や急変時の対応に不安を感じている介護職員も少なくありません。
ご入居者本人や、ご家族の看取りケアニーズに合わせた施設内での研修を含め、今後、看取りケアを実施する有料老人ホームが一般的な時代となるでしょう。
全国有料老人ホーム協会 業務アドバイザー
株式会社ケアプロデュース 代表取締役
安藤 滉邦