100点満点のホームはありません
ホーム選びのご相談を受ける中で、皆さん様々な希望をおっしゃいます。交通至便、食事もおいしい、介護・医療協力体制もしっかりしているところ、加えて元気な方向けの充実したアメニティ、フィットネスクラブ併設を求め、なおかつ低価格を要望されます。現実にはこのようなホームは残念ながらありません。
ホーム選びでは、ホームでの暮らしに何を求めるのか、何を重視するのかを明確にすることが大切です。その上で優先順位をどう考えるかです。
例えば食事についてですが、好みも健康状態も人それぞれです。入居者全員が満足するようなメニューの提供は無理でしょう。また元気なときは食材や味、ボリュームが重視されますが、介護が必要になり嚥下力が弱くなったときに、どのような食事が提供できるかも一方で重要になります。元気なときには味やメニューに不満を持っていた方も、病気の際に治療食が提供され、介護が必要になり嚥下力が衰えても、風味を維持したきざみ食、ソフト食などが提供されることで満足度があがるケースもあります。
また、医療機関併設や温泉施設、プール完備を求める方もおられます。そうした要望に応える施設はごくわずかで、かつ価格は高額となります。むしろ、ホームの周辺環境を調べ、自身の持病にマッチした診療科目を有する医療機関、民間のフィットネスクラブや公営の運動施設が近隣にあるようなホームをチェックすることで選択の幅が広がります。
加えて、より便利で豊かな暮らしを送るために、ネットの活用をお勧めします。ホームの立地が不便な所でも、通販をはじめ各種サービスの利用(ネットバンキング、公的サービスの確認等)が簡単に行えます。デジタル機器を利用できれば、生活の利便性は大きく向上するので、スマホやタブレットに慣れることは、とりわけ高齢の方にとって有益です。
ホーム選びでは、何にこだわり何をあきらめるか、そしてあきらめた要素について、どう代替手段を確保するか・・このような視点が必要でしょう。
(公社)全国有料老人ホーム協会 参与 倉田 久