自立型ホームを選ばれた方の思い
(息子孝行・戸建ての管理・独り暮らしの不安・・・)
自立型有料老人ホームは、最近、特に介護専用型有料老人ホームが増えたことに伴い、全体の割合としては非常に少なくなっています。しかしながら、自立型有料老人ホームは介護保険制度が始まる前から運営しているホームが多く、「有料老人ホームの元祖」とも言えます。自立型ホームの場合は、入居後も自由度が高く、外出はもちろん、何度も海外旅行へ行かれる方も多く、友人をホームに招待するといった交流も盛んです。そのため、ホームでの生活は今までの生活上の延長として捉えることができます。さらに、自立型ホームから職場へ通勤する人もいます。そして、入居者は自ずとホームで年を重ね、以前の自宅ではこのような老後生活はできなかったと気づくのです。
・息子孝行
一般的には「親孝行」という言葉が広く使用されていますが、「孝行息子」とは、精選版日本国語大辞典によれば、親孝行な息子を言います。親を良く敬い、よくつかえる息子とされています。「息子孝行」とは明確な定義がないので、私見になりますが、「息子の世話にはならない」または、「息子には親の面倒を見てもらわなくても構わない」とも言えそうです(「娘」に読み替えても同じです)。ここで息子に迷惑をかけたくないと言いながらも有料老人ホーム入居時の身元引受人には、息子(娘)を指名する場合がほとんどです。身元引受人等に誰を指名するかを間違えると、ホームでの面会などに支障をきたすことがありますので、ご注意ください。
・戸建ての管理
戸建ては集合住宅とは異なり、地元自治会との付き合いはもとより、家周りの清掃管理や、ゴミ出し、庭木の管理では隣家との境界問題もあり、係争となるケースが少なくありません。庭木が隣家にはみ出し、その伐採を庭師に頼むようになり、高齢者で戸建てを管理するには手に余るとお聞きします。また、防犯面での安全性、防火管理も見逃せません。特に不動産は、相続人が複数いたりすると処分が容易ではなくなるため、早めに処分し、売却して得たお金を有料老人ホームの入居一時金に充当する人も多いようです。戸建てを空き家にしてしまうと、家の管理が行き届かなくなり、荒廃してしまうケースがあります。早いうちから自宅をどうするのか考えておく必要があります。
・独り暮らしの不安
高齢者の独り暮らしにおいては、社会問題として引きこもりが指摘されます。引きこもりは、社会とのつながりを切断してしまうので自治体が頭を悩ますところです。独り暮らしや2人世帯の高齢者に対し、自治体は定期的に実態調査を行っているようですが、その調査から漏れてしまう場合があるとお聞きします。そうなると、社会から完全に孤立した状態の高齢者が存在することになってしまいます。男性の独り暮らしにおいて、特に奥様と離別・死別した人は、従来よりもその生活水準が低下してしまうケースが多くみられます。それでも定期的に新聞の配達や宅配食などを利用している人は、客観的に生活を確認することができるものの、利用していない場合、安否確認は困難になります。有料老人ホームにおいては安否確認サービスや食事の提供、またレクリエーションなどによる入居者や職員との交流があるため、引きこもりや孤独死などによる不安から解消されるのではないでしょうか。
(公社)全国有料老人ホーム協会 参与 中村 正文