(ご家族からの質問)
夫が家族に相談もなく有料老人ホームと入居契約を交わし、その際に身元引受人欄に長男の名前を夫が無断で書いたのだが、この入居契約は有効なのか。入居契約をしたものの、結局夫は入居をせずに解約した。入居者の自己都合による解約ということで、契約書に基づき費用を請求されているが、身元引受人本人が署名した契約ではないため、入居契約自体が無効となるのではないのか。
≪相談者に対する苦情対応委員会のコメント≫
有料老人ホームの入居契約では、身元引受人を立てることが一般的です。その場合には、身元引受契約が伴わないと、入居契約の申込について承諾されないことが原則です。賃料債務の保証会社と共に身元保証をする会社を利用することも考えられます。
身元引受人の役割として以下のような事が契約書に記載されています。身元引受人は、設置者との合意により以下の義務を負います。
一 入居者の生活維持のため、又は介護等に関する意見申述等を行い、必要に応じて設置者と協議する。
二 入居者が死亡した場合の遺体及び遺留金品の引き受けを行うよう努める。
三 入居者が本契約を解除された場合、入居者の身柄の引き取りについて協議する。
このような役割があるため、身元引受人には必ず入居契約書を確認してもらい、身元引受人の役割を説明し、理解したうえで、契約書にサインをしてもらうなどの手続きを行ってください。
~入居を検討している方へ~≪トラブル回避のためのチェックポイント≫
契約書の身元引受人欄には引受人予定者本人に署名をしてもらわないと、身元引受人に関する契約部分は無効になる可能性があり、上記諸事項の処理に困ることが有り得ます。引受人予定者が契約に立ち会えない場合は、郵送して身元引受人に署名をいただき送り返していただく事が必要です。郵送の場合は、事業者側も身元引受人に電話等で本人確認をとる方が(電話等で確認をとった旨の記録を残す)トラブル防止となります(連帯保証人も同様です)。どうしても代理でと言われる場合は、委任状を事前に準備していただく事で代理に署名を認めるなどの対応が必要です。
(参考)
公益社団法人全国有料老人ホーム協会 有料老人ホーム標準入居契約書(6 訂版)
(入居者からの解約又は契約解除)
第27条 入居者は、設置者に対し解約日の少なくとも30日前までに申し入れを行うことにより、本契約を解約することができます。解約の申し入れは設置者に対し所定の書面による解約届を提出するものとします。
2 入居者が書面による前項の手続きを経ずに退去した場合、設置者は、退去の事実を知った日の翌日から起算して30日目をもって、本契約が解約されたものとします。
3 本条第1項に関わらず、入居日の翌日から三月以内に解約しようとする場合は、所定の様式により届け出ることで予告期間なく解約することができます。
4 入居者は、設置者又はその役員が次の各号のいずれかに該当した場合には、本契約を直ちに解除することができます。
一 第42条の確約に反する事実が判明したとき
二 本契約締結後に設置者又はその役員が反社会的勢力に該当したとき