1.ご家族からの相談
親が要介護者専用の有料老人ホームに入居することになり、12月5日を入居予定日と考えていた。ところが、ホームから11月30日を入居日として契約すれば、キャンペーン価格が適用されると言われたので、それを了承して、11月30日を入居日として月払い方式で11月27日に契約した。契約後、12月4日に親が入院してしまい、結局入居することがないまま、ホームへの連絡が12月6日となり、その日に解約を申し入れた。解約にあたって、ホームからは利用料精算の起算日を入居日の11月30日とすると言われた。入居者側の都合による解約だが、そもそもキャンペーン価格の話を持ち出されて入居日を早めたのに、11月30日から費用を請求されることに納得できない。
2.押さえておきたいポイント
・現実に入居する前の12月4日に御本人が入院してしまったことは契約締結後の専ら入居者側の偶然の事情変更に過ぎないため、契約時点で、双方が合意のうえで11月30日を「入居日」とし、月払い契約を結んでいるため、契約上はその日から料金が発生するという効力を争うことは原則として難しい。
・もっとも、ホーム側の勧誘担当者が、キャンペーン適用の条件を明示し、12月5日に通常の形で契約した場合と、予定を早めて11月30日にキャンペーン価格により契約した場合とで、両者のメリット・デメリットを説明し、契約の選択肢を提示していたかどうかという説明義務違反の問題も生じ得るが、通常は書面やメール、録音等の客観的証拠が残っていないことが多いため、その場合は契約文言だけが立証手段となり、勧誘方法について説明義務の違反としての違法性を主張して賠償を求めることも難しい。
3.これから入居を検討する方へ
有料老人ホームの契約で入居日は、利用料の請求においてとても重要な日付となります。キャンペーン等を理由に安易に契約することなく、以下について契約前に確認し、曖昧な部分をなくすことがトラブル防止の鍵になります。
チェックポイント |
確認すべきこと |
入居日と料金発生日 |
契約上の入居日=料金発生日かどうか 料金発生日がいつか契約書で確認する |
キャンペーン条件 |
入居日を早めることで不利益がないか |
解約時の費用負担 |
入居前に解約した場合の費用・返金ルール |
契約書・重要事項説明書の確認 |
口頭説明と書面の記載が一致しているか |
(参考)
・有料老人ホームの設置運営標準指導指針(2024年12月6日)12 契約内容等⑴ 契約締結に関する手続等 ⑵ 契約内容
・公益社団法人全国有料老人ホーム協会有料老人ホーム標準入居契約書(6訂版)(入居予定日前の契約終了)第40条