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第三者のためにする契約(有料老人ホームとの契約を題材に)

暮らしに役立つ情報

第三者のためにする契約(有料老人ホームとの契約を題材に)

有料老人ホームとの契約において注意いただきたい点として「第三者のためにする契約」があります。「第三者のためにする契約」について、埼玉総合法律事務所 弁護士 月岡朗先生に解説いただきます。

ご本人が有料老人ホームへ入居する場合、お元気で判断能力もしっかりしていれば、ご自身でご契約できます。

しかし、お体が不自由で字が書けない場合や、認知症が進行して判断能力が不十分な場合、誰が契約すればよいのでしょうか。ご家族が代わりに有料老人ホームの入居契約をできるのでしょうか。

このような場合、ご本人に判断能力があるかどうか、また契約者の名義がご本人かご家族かにより、契約方法が異なってきます。以下において、それぞれの場合に分けて、ご説明いたします。

1.ご本人に判断能力がある場合

(1)ご本人の名義でのご契約

まず、ご本人に判断能力があるものの、お体が不自由で字が上手く書けない等の理由で、ご家族に契約書に自分の名前(ご本人の名前)を書いてほしいというご希望をお聞きすることがあります。

このように判断能力のあるご本人の了承の上で、ご家族がご本人の名前を契約書に代筆する場合、有料老人ホームとご本人との間で有効に契約が成立します。

なぜなら、ご家族は、判断能力のあるご本人の手足として名前を書いているに過ぎず、ご本人が、判断能力のある状態で、有料老人ホームへの入居契約を締結する意思を表示しているからです。

(2)ご家族の名義でのご契約

ア できればご本人による契約手続きを

次に、ご本人の名義ではなく、ご家族が、ご本人のために、ご家族の名義で有料老人ホームの入居契約をする場合はどうなるでしょうか。

例えば、ご本人に判断能力はあるものの、事故や病気等で契約手続きができない時に、ご家族が有料老人ホームを探す場合などです。

このような場合でも、可能であれば、ご本人が契約手続きのできる状態になってから、ご本人の好みにあう有料老人ホームを探して、ご本人が有料老人ホームと契約した方がよいと思います。有料老人ホームは長い時間を過ごす住まいになりますので、食事や施設の雰囲気などを確認して、入居する方が納得して契約することが大切です。

とはいえ、さまざまな事情で、ご家族が、ご本人のために、ご家族の名義で有料老人ホームと契約をせざるをえないこともあるでしょう。このようなご家族の名義での契約を第三者のためにする契約といいます。

イ 第三者のためにする契約とは

第三者のためにする契約とは、契約当事者の一方が、契約当事者以外の第三者に対して、サービスを提供する等の契約です(民法537条以下)。

上記のように、ご家族がご本人のために有料老人ホームと契約をする場合には、有料老人ホームとご家族が契約当事者であり、ご本人が第三者となります。有料老人ホームは、ご本人に介護サービス等を行う債務者となります。

このようなご家族と、有料老人ホームと、ご本人の関係を図で示すと、以下のようになります。

第三者のためにする契約の契約当事者は、ご家族と有料老人ホームになります。第三者であるご本人は契約の当事者ではありません。そのため、ご家族がご家族の名義で有料老人ホームと契約することになります。

第三者のためにする契約においては、第三者が債務者に対して契約の利益を受ける意思を表示した時に、第三者は債務者に対して直接サービス等を請求する権利が発生することとされています(民法537条3項、同条1項)。

先ほどの例で言えば、ご本人が、有料老人ホームから介護サービス等を受けて生活していくという意思を表示した時に、ご本人は有料老人ホームに対して介護サービス等を請求できるようになるということになります。

このような介護サービス等を受ける意思というのは、介護サービス等の請求等の「黙示の意思」の表明でもよいとされています。

なお、第三者であるといっても、第三者が契約の利益を受ける意思を表示した後は、契約当事者は第三者の権利を変更させたり、消滅させることはできなくなります(民法538条1項)。先ほどの例で言えば、ご本人が契約の利益を受ける意思を表示した後は、ご家族や有料老人ホームは、ご本人の権利を変更させたり消滅させたりすることはできません。

以上のように、ご本人に判断能力はあるものの、事故や病気による入院等で一時的に契約できないという場合には、ご家族が第三者のためにする契約をする方法があります。

2.ご本人に判断能力が無い場合 

(1)ご本人の名義でのご契約

では、上記のご本人に判断能力がある場合とは異なり、ご本人の認知症等が進行して判断能力がなくなった場合、有料老人ホームとの契約はどうすればよいのでしょうか。

ア 判断能力がないと契約できない

まず、このような場合、そもそもご本人に判断能力がなくご自身では契約が締結できない状況です。

次に、ご家族であっても、親権者の未成年者に対する代理権(民法824条)、夫婦の日常家事の範囲の代理権(民法761条)などの特別な場合でない限り、他の家族に代わって契約をすることはできません。

ご本人の契約の場面は、親権者の未成年者に対する代理権とは場面が異なります。また、有料老人ホームとの契約は、夫婦の日常家事の範囲ともいえないと思われます。そのため、ご家族がご本人の名義で有料老人ホームとの入居契約をすることもできないでしょう。

仮にご家族が、契約書にご本人の名前を有料老人ホームの入居契約書に書いても、無効です。

イ 成年後見人による契約手続

そこで、ご本人に判断能力がない場合、ご本人の代わりに契約をする権限のある成年後見人が契約することとなります。

ここで、成年後見人とは、ご本人が契約を理解できない状態になった時に、ご本人に代わり、契約をしたり、財産を管理する人のことです。この成年後見人は、ご家族等の申立てにより家庭裁判所が選任します(民法843条)。

このように、ご本人の判断能力がない場合には、有料老人ホームとの契約は、成年後見人が行うのがよいでしょう。

誰が成年後見人になるかは家庭裁判所が決めますが、ご家族が成年後見人の候補者になることは可能です。成年後見の申立てをする際に、ご家族が成年後見人候補者となることをご検討してみてもよいでしょう。  

(2)ご家族の名義でのご契約

上記のように、ご本人に判断能力がない場合には、成年後見人を選任してもらった後に、成年後見人において有料老人ホームと入居契約をすることが適切です。

しかし、成年後見人が選任されるまでの手続きには時間や手間がかかることもあり、その選任まで待つことが難しく、先にご本人に有料老人ホームに入居してもらわざるをえないこともあるでしょう。

そのような場合には、ご家族が、ご家族の名義で、ご本人のために、有料老人ホームと「第三者のためにする契約」をする方法もあります。

このような場合、ご本人に判断能力がない以上、ご本人が、第三者のためにする契約の利益を受ける意思を表示することが困難な場合が想定されます。

しかし、ご本人が第三者のためにする契約の利益を受ける意思を表示しなくても、有料老人ホームとご家族との間で契約が成立している以上、債務者である有料老人ホームは、ご本人に対して介護サービス等を提供する義務があります。そのため、ご本人は、有料老人ホームの介護サービスを受けることができます。

ただ、このような場合の第三者のためにする契約で困ってしまうのは、ご本人の判断能力がない以上、ご本人との話し合いでご家族が負担した有料老人ホームの費用をご本人に精算してもらうことはできません

ご家族の経済状況によっては、有料老人ホームの費用をご家族が負担し続けることが困難な場合もあると思います。

そこで、ご家族の名義で有料老人ホームとの契約をした場合でも、その後に、やはり成年後見人の選任の申立をして、成年後見人と話し合って有料老人ホームの費用を精算してもらうことを検討した方がよいと思います。

3.お元気なうちに有料老人ホーム探しを 

今まで述べたとおり、ご本人の判断能力がない状態になった後に、有料老人ホームとの契約をする場合、最終的には、ご家族において成年後見人等の申立てが必要になることが少なくありません。

ご家族が有料老人ホーム探しと成年後見の申立てをすることは大変ですし、成年後見人が選ばれるまで有料老人ホームの費用を精算できないとなれば、負担を感じることもあると思います。

そのようにならないように、できればお元気なうちに、有料老人ホームを探しておくことがよいと思います。

また、有料老人ホームの食事の味やお部屋が好みかどうかは、人それぞれ異なると思います。有料老人ホームの雰囲気やスタッフの対応も人によって感じ方が異なることがあるでしょう。

判断能力がなくなると、ご家族や成年後見人に有料老人ホームが探してもらうことになりますが、ご家族でも上記のような点は好みや感じ方が異なり、ご本人にとって快適な有料老人ホームを選べない可能性があります。有料老人ホームは長く生活する住まいとなることが多いので、お元気なうちに自分の好みのホームを探してみてはいかがでしょうか。


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