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遺言(後編)

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遺言(後編)

高齢者の方が、老い支度として準備した方がよいものとして「遺言」があります。「遺言」後編について、埼玉総合法律事務所 弁護士 月岡朗先生に解説いただきます。

3.遺言を作成した方が良い人とは

遺言を作成した方が良い場合とはどんな場合でしょうか。これは遺言がない場合にどうなるか考えるとわかりやすいと思います。
遺言がない場合には、法律で決められた相続人で、話し合って遺産を分けることになります。そして、法律では、相続人の間で、遺産の取り分が決められているので、遺産を分ける話し合いの時には、基本的には法律で決まった取り分に従った分け方になることが多いでしょう。
そのため、①遺産の分け方を自分で決めたい場合、②相続させたくない相続人がいる場合、③相続人以外(例えば、内縁の妻やお世話になったご友人)に遺産を渡したい場合には遺言を作る必要があるでしょう。
また、④特定のお子さんに事業を承継させたい場合にも、集中して相続させるために遺言を作成した方が良いでしょう。
さらに、遺族に対するメッセージを記載することもできます。そのため、⑤相続人間で遺産を巡る争いになってほしくない場合などには、このように遺言における遺産の分け方が自分の希望であることを記載したり、遺族が仲良く末永く暮らしてほしいという思いを記載することで、相続人間の紛争を防ぐことを期待するという方法もあると思います。

4.遺言の限界

 遺言で、財産を分ける時に、注意しておいた方が良い点があります。それは、兄弟姉妹以外の相続人には、遺留分があるということです。遺留分とは、一定の相続人のために、遺産から法律上取得することが保障されている最低限の取り分のことです。
例えば、遺言作成者に妻と子供2人(長男、長女)がいるケースを想定してみましょう。遺産として4000万円相当の財産があり、長男に全財産を相続させる遺言を作成した場合、どのようになるでしょうか。

遺留分の計算は、遺留分割合✕法定相続分で計算します。 この場合、妻と長女には遺産に対して2分の1の遺留分割合があります。そして、妻の法定相続分は2分の1、長女の法定相続分は4分の1なので、妻は遺留分割合1/2✕法定相続分1/2=1/4に相当する1000万円の遺産を取得することができます。
長女は遺留分割合1/2✕法定相続分1/4=1/8に相当する500万円の遺産を取得できます。
その結果、長男は妻や長女の遺留分侵害請求により4000万円ではなく、4000万円-1000万円-500万円=2500万円相当の遺産だけしか取得できないこととなります。

このような妻や長女から長男に対する遺留分に相当する金銭の支払いを請求することは、時に、家族間の紛争になる恐れもあります。
可能であれば遺言においては、妻や長女に遺留分に相当する財産を相続させる旨の内容にしておくと良い場合もあると思います。  

5.遺言によって遺産取得額が大きく異なるケース

他方で、遺留分のない兄弟姉妹の相続人との関係では、遺言を作成することで妻の遺産取得額に大きな違いが生じます
例えば、遺言作成者に、妻のほかに兄弟2人いる場合で、4000万円相当の遺産があるケースを想定してみましょう。
遺言がない場合には、妻は法定相続分の3/4に相当する3000万円相当の遺産を取得し、兄弟2人は、それぞれ法定相続分の1/8ずつに相当する500万円ずつの遺産を取得します。
これに対して、遺言で「妻に全財産を相続させる」という文言がある場合、兄弟姉妹には遺留分はないので、妻は4000万円全額の遺産を取得し、兄弟姉妹は0円となります。

6.遺言の作成のポイント

遺言の作成のポイントとしては、できれば遺言の中で、残される家族に対する感謝の言葉と、遺言作成者が悩んだ上でこのように遺産を分けるように決めた言葉、残される家族が仲良くしてほしいという言葉を書いておくとよろしいかと思います。
このような言葉は、法律的な効果はありませんが、遺産を受け取る側としても、そのような言葉が書かれていると、遺言作成者の意思を尊重して、紛争になることが少なくないように思います。
病床で自筆証書遺言を作成する場合など、遺言作成時の判断能力が将来争われるか心配であれば、医師の診断書を作成してもらっておくとよいでしょう。
また、その他には、公正証書遺言で作成することや、遺留分を侵害しない遺言を作成することもご検討いただけたらと思います。
なお、遺言の作成を、家族に相談するかどうかは慎重に考えた方がよいと思います。時に、子供同士が、遺言作成者に自分に有利な遺言を作成してもらいたいと思い、生前から家族間での紛争になる事例が見受けられるからです。

7.最後に

老い支度として、遺言を作成することで、死後に残された家族間の紛争を防げて、安心できるというメリットがあります。遺言を作成して、「これでもう私に何があっても安心だね。」と仰って、有料老人ホーム等で快適な生活を過ごす方もいらっしゃいます。
特に、老人ホームに入居される方の中には、入居に伴い、ご自宅を売却して、金融資産がほとんどの財産になる方もいらっしゃると思います。金融資産は、割合で分けやすいので、遺留分を侵害しない遺言を作成しやすい特徴があります。老い支度として、遺言の作成とともに、有料老人ホームへ入居することを検討されてみてはいかがでしょうか。

遺言(前編)はこちら

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